相談例から民法を考えましょう(ケース5について)
【事例】損害の賠償請求はいつまで:生命・身体に関する損害賠償請求権の消滅時効
- 交通事故で死亡したりや負傷したりした場合、加害者に対する損害賠償請求はいつまでできるか。
- 美容専門クリニックで顔のたるみを取る手術を受けたら、かなり大きな手術痕がのこってしまった。事前にはほとんど手術痕は残らないという説明を受けていた。医師は再手術をするというが、もし手術痕が残るようなら補償を求めたい。損害賠償を請求できる期間を知りたい。
アドバイス
事例1の場合、不法行為による損害賠償請求権となり、いままでの民法では、消滅時効は損害及び加害者を知った時から3年です。また、不法行為の時(交通事故に遭った時)から20年の期間制限(除斥期間といいます。)もあります。
事例2の場合は、医師の債務不履行による損害賠償請求権となり、いままでの民法では、権利を行使することができる時から10年で消滅時効となります。したがって再手術をしても手術痕が残り、10年を経過していなければ損害賠償請求が可能となります。
- 不法行為:故意や過失によって違法に人に損害を与えることです。
- 債務不履行:相手が約束を果たさないことで、商品を約束の日に渡さない、期日までにお金を払わない場合などです。
チェック
- 損害賠償請求権にも消滅時効がありますが、2020年(令和2年)4月1日施行されることになった改正民法では、生命・身体の損害に関する損害賠償請求権については、時効期間を長めにして、保護を厚くしました。
- 不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間は、通常の場合、損害及び加害者を知ったときからは3年ですが、2020年(令和2年)4月1日施行されることになった改正民法では、生命・身体に損害が生じた場合は、5年に延長されました。不法行為の時から20年たつと、損害や加害者を知らなくても時効になります。
- また、債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間は、通常の場合権利を行使できる時からは10年ですが、生命・身体に損害が生じた場合は、20年とされました。
ポイント:製造物責任法(PL法)と消滅時効
- テレビから発火し、火傷を負ったり、カーテンが燃えてしまったような場合、製造物責任法(PL法)に基づいて、被害者が製品の欠陥により生命、身体または財産に被害を被ったことを立証すれば、損害賠償を求めることができます。
- 損害賠償請求権の時効期間は、いままでの民法では被害者が損害及び加害者を知った時から3年ですが、2020年(令和2年)4月1日施行されることになった改正民法の施行にあわせて、生命・身体に損害が生じた場合は5年に延長されます。
- また、製造業者などが製品を引き渡した時から10年経過すると時効となります。ただし、医薬品の副作用のように、身体に蓄積してから健康被害が生じる場合や一定の潜伏期間を経て症状が現れる場合については、発症してから10年で時効になります。